新宿御苑の地は,明治12年より宮内省所管となり,当初は御猟場や養蚕関係施設がおかれたが,徐々に皇室の植物園として整備された。
御苑中央の芝庭の北にほぼ南面して建つ旧洋館御休所は,皇族が温室を利用する際の休憩所として明治29年に建設されたもので,設計は宮内省内匠寮である。形式は木造平屋建,本屋を切妻造,スレート葺,庇部分を瓦棒型鉄板葺とする。
新宿御苑旧洋館御休所は,当時アメリカの住宅建築を中心に流行した様式を基本とした瀟洒な外観をもち,意匠的に優れ,高い価値がある。
また,明治大正期における皇室関係の庭園休憩施設として唯一の遺構である。
保存状態も良好で,わが国近代の建築界において独自の地位を築いた宮内省内匠寮の作風の一端を知る上でも重要である。