絹本著色松に唐鳥図(佐竹曙山筆/) けんぽんちゃくしょくまつにからとりず

絵画 / 江戸

  • 佐竹曙山
  • 江戸
  • 1幅
  • 重文指定年月日:20030529
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 個人
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 秋田蘭画は、近代洋画の源流として、日本絵画史上に重要な意義をもつ画派であり、従来、小田野直武【なおたけ】(一七四九~八〇)筆の絹本著色不忍池図(秋田県、昭和四十三年四月二十五日指定)および絹本著色唐太宗花鳥図(秋田県、平成十一年六月七日指定)が重要文化財に指定されている。
 秋田藩第八代藩主佐竹義敦【よしあつ】(一七四八~八五、号曙山【しょざん】)は、安永二年(一七七三)に秋田藩に招請した平賀源内のもとで藩士の直武に洋風画の技法を学ばしめたのみならず、自らも直武を通じて本格的に洋風画を学んだ。曙山は直武と並ぶ秋田蘭画の代表的作家であるうえに秋田蘭画の推進者であり、また今日知られる初めての西洋画論である『画法綱領』と『画図理解』を著した。曙山なくして秋田蘭画はありえなかったといえよう。
 曙山が洋風画を制作した期間は一〇年余りで、たしかな作として認められているものは二〇点に満たない。そのなかで、本図は最も大作であり、また、秋田蘭画の特徴を顕著に示すものである。すなわち、漢画系の花鳥図に由来する近接拡大された松樹と舶載【はくさい】銅版画に基づいた細密表現による遠景、写生画帖から取材した鳥の組み合わせは、秋田蘭画の最も代表的な構図法を明快に示している。また、本図の松樹は曙山の類品のなかでも立体感の表現が最も優れている。
 異国の珍鳥を配した松樹をかくも大胆に描いた迫力のある構図は、いかにも君主らしい着想といえよう。新しい表現に取り組む意気込みと構図の気宇の大きさが、学んだばかりの技法の未熟さを補い、清潔な美しさと高い画品を有する優品である。秋田蘭画の代表作の一つとして貴重である。

絹本著色松に唐鳥図(佐竹曙山筆/)

ページトップへ