木造男神坐像

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19960627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 出雲大神宮
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 出雲大神宮本殿(重要文化財)内陣の三間に神体として祀られる男神像三躯である。主神像は大国主命と伝称され、最も大きく等身の法量があり、両足部・手先を含んでカヤの一材より丸彫りし、素地彩色を施している。肩幅広く、上体を反らして胸を張り、膝を左右に大きく張って両足を組んで坐る姿は力強さと安定感に満ち、頭部に載く四面頭飾を立て廻した方形の冠が像に独特の威厳を加えている。大づかみな量感の表現など、九世紀末から十世紀初めころの作風を示している。
 当社は山陰道の入口という交通の要衝に鎮座し、弘仁九年(八一八)名神に列せられると、承和十二年(八四五)従五位下を皮切りに延喜十年(九一〇)正四位上まで順次神階位を授けられており、この間に当地の有力神として朝廷に重視されるようになった事情がうかがえる。主神像はおそらくこうした動向と関連して造られたものであろう。
 本指定のいま一躯は主神より一回り小さく、やはりカヤかとみられる材を用いるが、大略前後二材を矧ぎ寄せる構造になる。鼻が付け根から異様に高く隆起し、眉を吊り上げて威嚇するように眼をむく風貌にはすこぶる異色がある。総じて彫り口は荒々しく、表面はノミ痕を残して仕上げ、衣文線や石帯は墨描で表すのみにとどめている。比較すべき作例は求めがたいが、古式な〓頭の形や、造形に一種初発的な迫力が感じられる点などからみれば、主神像からさほど隔たらぬ時期の製作と考えられる。初期神像の異色作として注目されよう。
 附の一体はクスノキとみられる一材から荒彫りに近い彫技により、主神像に倣ったような姿が丸彫りされる。粗放な造形で、製作年代の推定は難しいが、本殿が建立されたという貞和元年(一三四五)をその下限と見ることができよう。

木造男神坐像

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