この芸能は、静岡県との境の標高四、五百メートルの山腹に数戸点在している愛知県南設楽郡鳳来町七郷一色の黒沢部落の阿弥陀堂の祭(旧正月六日)に行われる。鳳来寺、田峰の田楽とともに三河の三田楽と称されている芸内容の豊富なものである。
舞は、まず神楽風の「鎮守の舞」、「阿弥陀の舞」で始まり、四十分ばかりも刀を振りながら活溌に踊る「つるぎ」、鎮めの舞「ほこ」、「獅子」、祝福と祈祷の舞「翁」、「松かげ」、「三番叟」、後半には太鼓を田や畑に見立てての田遊びの各演目など三十番以上もの次第を伝承している。
これは、三信遠境の山間を中心にして行われている同種芸能とともに、田楽の能をはじめ、猿楽、呪師の芸など中世芸能の面影をよく伝え残しており、芸能史上価値の高いものである。