漢の司馬遷が撰した「史記」の宋版本で、集解(宋・裴〓【はいいん】)、索隠(宋・裴〓)、索隠(唐・司馬貞)、正義(唐張守節)の、三種の注釈を合わせた合刻本として現存最古の完存本であり。「史記」研究上世界的に貴重な資料である。第二冊の「集解序」の末尾に、「建安黄善夫刊・于家塾之敬室」の木記があって、今回重要文化財に指定された、同氏所蔵の「前後漢書【かんじよ】」と同版型であることが判明し、南宋慶元年間(一二世紀末)の印行本と考定されている。その印刷も鮮明で、刻字も誠に端正である。
なお、本書には五山僧らによる細かな注記が加えられて史記研究の跡を伝え、その伝来も、南化玄興より直江兼読、米沢興譲館へと受けつがれ、由緒の正しさを示している。