下座音楽 げざおんがく

伝統芸能 歌舞伎

  • 選定年月日:19550319
  • 記録作成等の措置を講ずべき無形文化財

 下座音楽【げざおんがく】は、歌舞伎舞台下手の黒御簾【くろみす】の中で演奏されるものである。観客はもっぱら役者の演じぶりだとか芝居の筋に気をとられるが、下座音楽を欠いたら歌舞伎は随分気の抜けたものとなる。気を付けてみると幕あき幕切れから、人物の出入り、対話の間、心理描写に至るまで巧みにその雰囲気を醸成している。唄あり三味線あり、それに笛、大小の鼓【つづみ】、大太鼓【おおだいこ】、太鼓、釣鐘、銅羅【どら】、チャッパ、松虫、鈴など種々の鳴物【なりもの】で工夫が凝らされるが、大太鼓一つで風音、波音、音のしないはずの雪音まで打ち分けるあたりは目を見張らせる。
 下座音楽は舞踊を主とした歌舞伎の初期においては、能のように舞台上に顔を見せていた。今日のように舞台の蔭【かげ】に隠れてしまったのは、歌舞伎の内容が舞踊よりも登場人物の対話が主になってからである。

下座音楽

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