規矩術(近世規矩)

文化財保存技術 建造物

  • 選定年月日:19930303
  • 選定保存技術

 規矩術は、指矩【さしがね】を駆使して反り上がった軒など建造物各部の立体的な複雑な納まりを定める技術であり、わが国の伝統的な木造建築修理の設計・施工に欠くことができない。中世の末期に至って大成し、工匠間の秘伝として伝承されてきた。近世になって和算の興隆とともに理論づけられ、工匠にとって必須の知識と技術として今日に受け継がれてきている。しかし、昨今の建築業界では、高度な規矩術を必要とする本格的な木造建築が少なくなり、その技術は次第に低下しつつある。
 近世以前の規矩は、基本的な要点をおさえるだけで細部は経験に基づいて建物ごとに臨機に納めたとみられるが、近世の規矩は立体機何学の理論に基づいて精緻に構成されている。
 建造物の修理にあたっては近世規矩の知識が基本となっており、この技術の理解は中世の規矩を把握するうえでも重要である。
 このように近世規矩は建造物の修理にあたり、最も重要な技術の一つである。
 なお、この技術は昭和五十五年に選定保存技術に選定され、上田虎介【あげたとらすけ】氏が保持者に認定されたが、昭和五十九年同氏が死亡したため選定解除されたものである。
 近世規矩術は文化財建造物の修理にあたって必要不可欠の技術であるが、これを高度に体得している者は少ない。

規矩術(近世規矩)

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