法華寺庭園 ほっけじていえん

名勝

  • 奈良県
  • 奈良市法華寺町
  • 指定年月日:20010129
    管理団体名:
  • 史跡名勝天然記念物

 法華寺は奈良時代総国分尼寺として創建された法華滅罪之寺の法灯を引く尼門跡寺院である。江戸時代に入り,後水尾上皇の皇女で近衛信尋の養女として入寺した高慶尼が秀頼復興後の寺域を整え,客殿は寛文年間御所からの移築,庭園もそのときの作庭で,御所的な雰囲気を感じさせている。庭園は三区からなり,中門から客殿に至る前庭,客殿南面の内庭,上御方西南に広がる主庭からなる。
 前庭は築地によって限られる矩折状の通路で中央部に鱗敷の敷石道を設け,マツ・マキの規則的な植栽列によって縁取られる整形的な格式を感じさせる空間となっている。玄関近くには御所から移植したと伝える梅樹がある。進むに従って通路幅がやや狭くなり,遠近感を演出する構成となっている。
 内庭は広くない空間を平庭・露路風に仕上げた瀟洒な庭で,へ字状に折れる透塀で主庭と接し潜門を穿つ。左手に閼伽井・灯籠を配し,右手に捨石一つ,前面に伽藍石を置き若干の高木植栽を配するのみの簡素な構えの壺庭的空間である。
 主庭は東から岬状に伸びる築山を包み込むように広がる池を中心とした庭で,岬先端部から池北岸に山形の土橋がかけられる。この土橋を境に東水面には杜若,西水面には蓮が植えられている。上御方正面の築山は透塀潜門東から延びる混植高生垣に巻き込まれるようにして背景(南面)を仕切られる。この築山には枯山水風滝石組と水流を表す砂利敷きが施されているが,今は灌木が茂りすぎてほとんど見ることはできない。主庭南西隅には高慶尼の元禄14年銘の墓碑がある。
 このように法華寺庭園は,三区からなる庭園空間がそれぞれ個性を持って作られていて,尼門跡の格式と優しさを示した御所の雰囲気を感じさせる庭園である。その構成手法は江戸時代前期の特徴を良く表しており,名勝に指定してその保護を図ろうとするものである。

法華寺庭園

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