笙は雅楽で用いる管楽器の一つ。17本の竹管の形を鳳凰の双翼がすっと上にのびる様子にみたてて、鳳笙とも呼ばれる。匏の吸口から息を吸い吐きすることにより和音を奏で、その音色は天上から差し込む光をあらわすといわれる。この笙は、竹管の内側に「上」「彳」「七」「言」などの竹名を、匏上面に「壽」の銘を金蒔絵で記している。銀地に錦で霊芝雲や龍文をあらわす共袋の豪華さ、笙に用いられた煤竹の質の良さ、きれいに揃った竹節の美しさなど、いかにも旧大名家伝来にふさわしい楽器といえる。鍋島家の雅楽器は、笙のほかに龍笛や篳篥など24点が現存しているが、その大半は「唐衣」と「寿」の銘を持つ黒漆塗長方箱に二分して納められていた。これらは10代直正から長女貢姫へ、その後貢姫から弟である11代直大へ譲られ、直大夫人栄子により昭和6年(1931)に整理されている。