「御印影」の外題をもつ表紙を含め11丁からなる10代佐賀藩主・鍋島直正(1814~71)用印の印影帳で、37個が押捺されている。印面の脇には印文を、さらに一部には、益田勤斎や橘蔵六、甲斐五峰、古川松根といった刻者(印の作者)も示されている。印種はおおよそ現存する印章と対応しており、幼少期の関防印として使用例が多い「先文次武」、これとしばしば併用される落款印の「肥前佐嘉」、「世子之印」、「滕世龍」、また「紫水」や「貞丸」など書幅に頻用されている印で掲載されていないものが少なくない。このことなどから、本資料は鍋島直正没後の成立と考えられる。