上野国佐位郡正倉跡は,渡(わた)良(ら)瀬川(せがわ)によって形成された大間々扇状地の西端に所在する。遺跡の北及び北東部には複数の湧水点が所在し,遺跡はこれらの湧水から流れる川によって舌状に解析された微高地上に立地している。平成14~25年度まで,伊勢崎市教育委員会によって19次にわたる確認調査が実施された。これにより,大溝によって区画された範囲の中に,礎石建物15棟,掘建柱建物40棟以上の倉庫群が検出された。存続時期は7世紀後半から10世紀前半にかけてである。平成17年の調査では,八角形倉庫が検出され,さらにこの建物が『上野(こうずけの)国交代(くにこうたい)実録帳(じつろくちょう)』の佐(さ)位(い)郡(ぐん)正倉(しょうそう)の「八面(はちめん)甲倉(こうそう)」と一致することが分かり,これにより上野国佐位郡正倉跡であることが確実となった。このように上野国佐位郡正倉跡は,文献と発掘調査によって検出された遺構が一致することによって,遺跡の内容が分かった事例として貴重である。また,古代の文献の記載に一致する遺構が良好に保存されており,古代官衙遺跡の在り方を考える上で極めて重要であることから,史跡に指定して保護を図るものである。