1936年7月18日,スペイン領モロッコでファシスト将校たちの決起がありました。これをのろしとして本土各地で軍隊の反乱が起こります。反乱軍の中心人物フランコ将軍をグロテスクで滑稽な姿で登場させたのが本作品です。制作を始めたのは作品上部に記された日付から,1937年1月8日と分かります。フランコの好き勝手な振舞いとその結末,そして息絶えた犠牲者たちで14コマの場面が描かれた時点で制作はひとまず終了しました。これらの試し刷りには,残りの4コマを空白としたまま,アクアチントを施していったのが認められます。この空白が,生と死の狭間で怒り嘆き苦しむ人々で埋められたのが,やはり作品に記入された日付より1937年6月7日。かの大作《ゲルニカ》が一旦完成を見せてからです。無差別爆撃を受けた《ゲルニカ》の世界を延長するかのような世界が展開されています。
《フランコの夢と嘘》は千部刷られ,《ゲルニカ》が展示されたパリ万国博覧会のスペイン館で販売され,その収益金はスペイン難民救済基金に寄付されました。ここでは,空白の4コマの存在も認められる一連の試し刷りを紹介しています。