道化
Clown
1930-31年頃
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-30]
道化を主題とした連作を重ねるようになった頃から、三岸好太郎の制作にはフランスの画家ジョルジュ・ルオーの影響が見られるようになる。本作品でも道化という主題や、黒く太い描線、重厚な色づかいなどに、彼のルオーへの傾倒がうかがえる。
三岸の描く道化の多くがそうであるように、本作もまた華やかなステージの上ではなく、どこかの片隅でただひとり静かにたたずんでいる道化である。どんな物思いにふけっているのか、白塗りの顔は表情を伝えはしない。しかしその奥から、いいようのない哀しみや憂愁、そして孤独や苦悩の気配がただよってくるようにも感じられる。