黄服少女
Girl in yellow
1930年
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-34]
三岸好太郎は生涯を通じて多くの女性に恋をし、またそれぞれの時期に魅惑的な女性像を残している。その時々の画風が女性像の表現にも反映しているが、一連の道化をテーマとする制作と同じ時期に描かれた女性像では、憂いを帯びた表情やポーズ、あるいは白い襟をつけた衣裳などに共通性を見ることもできる。
この「黄服少女」は第8回春陽会展の会場で「マリオネット」(当館蔵/O-33)と並んで展示された。展覧会評を記した画家・鏑木清方は「隣にある少女にもマリオネットの糸がつながってゐるように見えたのは錯覚かしら」という感想を述べている。そうした印象を与えるほど独特の謎めいた雰囲気を持った女性像である。
少女の脇にはピアノの鍵盤が見え、モデルは三岸と交際した音楽家・吉田隆子ともいわれている。女性作曲家の先駆者として活躍した吉田は、1929年に創設された人形劇団プークで音楽担当を務めた。三岸とはちょうどこの1930年頃に共通の友人(プークのメンバーだった中村伸郎や、画家の久保守など)を通じて知り合ったようである。ともに演奏会を聴きに行くなど、二人の交際は2年ほど続き、彼女の存在は三岸にとって音楽への関心を深めさせたものと考えられる。