ふりむいたあなた

版画 その他

  • 小作青史  (1936-)
  • オザク、セイシ
  • 昭和45年 / 1970
  • リトグラフ・紙・1
  • 84.5×64.5
  • 左下に刷番号; 右下に署名

69
ふりむいたあなた
You Turning Your Face Back
1970年
石版・紙
86.0×67.0cm
右下に署名:OZAKU Seishi, 左下に刷り番号:1/30
1970年個展(東京、大阪フォルム画廊)
小作青史の版画にはしばしば奇怪な人間の顔や姿態が見られる。この奇怪で幻想的なイメージは人間の根源に迫りながら、表面的には屈折した心理や人間社会の裏表をアイロニカルに、またコミカルに表わしていて、そこに作者の人間への深い洞察眼と辛辣な諷刺精神が見られる。作者はこれらのイメージを、予めきめたテーマの下に構想するのではなく、制作の過程で生み出していく。すなわち、版画の「下絵を作らず、版にむかって描き始めてから、描く過程で(イメージを)決めて行く」のである。「まずイメージがあって、それに似合う技法ではなく、技法を通して触発されて出てくるイメージを大切にしたい」と語る作者は、心の純粋な自動記述のように、部分から部分へ、部分から全体へと、視覚的体験をその場で追いながら直接、版面に描き進め、ひとつのイメージをもつ作品を完成する。《ふりむいたあなた》は静かに腰かけている「あなた」(顔の右耳下に描かれた表情の部分)が突然かけ出していく人(画面左上の、作者によれば「わたしJ)の気配に何事かとふりむき、眼を見開き、口をあけかけ、腕を上げ、腰を浮かしかける―この一瞬に起った一連の動作と表情を描いたもので、「離れるわたしと追うあなた」の間に引き合う緊張感が力動感のある達者な素描力で表現されている。

ふりむいたあなた

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