歌舞伎音楽竹本は、歌舞伎の舞台で用いられる義太夫節である。人形浄瑠璃の作品を歌舞伎化した義太夫狂言を上演するために不可欠な音楽であり、一八世紀以来、その上演とともに歴史を重ねてきた。情景の描写や人物の心情等を表現する点においては、人形浄瑠璃文楽や義太夫節のみの演奏と共通する技法であるが、一方で竹本は俳優の台詞と交互に演奏し、あるいは竹本に乗せて俳優が演技するなど、俳優の演技と密接に関わり、それを支え引き立てる点で特別の技術が必要であり、歌舞伎を構成するために極めて重要な要素となっている。歌舞伎音楽竹本は、芸術上高度の価値を有し、芸能史上特に重要な地位を占め、歌舞伎を成立させるうえで欠くことのできないものである。