大日本史編纂記録 だいにほんしへんさんきろく

歴史資料/書跡・典籍/古文書 文書・書籍 / 明治

  • 京都府
  • 江戸時代 / 1867
  • 248冊
  • 京都府京都市左京区吉田本町
  • 重文指定年月日:20170915
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 国立大学法人京都大学
  • 国宝・重要文化財(美術品)

『大日本史』は、水戸藩主徳川光圀(1628~1700)の命により、水戸徳川家において編纂された全397巻からなる紀伝体の史書である。編纂に藩内外の学者が史館員として参画したこと、博捜した文献を比較対照し考証を厳密に行ったうえに出典史料を明記し多数引用したこと、儒教思想に基づき歴史上の人物の正閏是非を問う意識をもった叙述がなされたことなどに特色がある。編纂は明暦3年(1657)から明治39年(1906)に至る長期に及んだが、主たる活動期は、①紀伝編纂にあたった前期(明暦3年~元文2年(1737))と②紀伝の校正、翻刻と志表編纂にあたった後期(天明6年(1786))~明治39年)に分けられる。
 本件は、大日本史編纂事業にかかり、江戸・水戸の史館(彰考館)を中心に書写された記録類で、内容及び伝来経過から(ア)「往復書案」193冊、(イ)「往復書案(写)」43冊、(ウ)「雑事記類」(含目録)12冊に大別される。これらはいずれも袋綴装四ツ目綴冊子で江戸時代後期の薄茶表紙が付され、(ア)・(イ)は一様に「往復書案」、(ウ)は内容に即した外題が書される。②期の最初期に、当時虫喰・損傷が顕著であった①期の「御用書」等について、解体のうえ裏打や表紙(前記薄茶表紙)新補等の修理、各丁の整序や破損部分の写本作成などの整理作業を施したものと推測される(『翠軒先生遺事』)。その際に、旧来本(ア)、新写本(イ)ともに「往復書案」という題が与えられた。
 (ア)は①期に江戸史館、水戸史館、光圀が隠棲した西山(常陸太田市)、さらには文献収集のために派遣された京都など各地に所在し編纂実務を担当した史館総裁・史館員間の書状案(下書)、(イ)は光圀時代の議論を編纂の参考にするために(ア)や史館保管の書状類原本を底本とし②期最初期に書写された記録、(ウ)は編纂にかかる日記類や特定の事柄に関する記録で、享和2年(1802)頃成立の「往復書案目録」は本件の伝来を考えるうえで重要である。
 本記録は、同時代、後代の学問・思想に大きな影響を与えた、我が国最大の史書である『大日本史』につき、紀伝編纂期間である延宝年間(1673~81)から元文年間(1736~41)を中心にその編纂過程を具体的に跡付けるもので、江戸時代の学問、思想を研究するうえで高い学術価値を有する。

大日本史編纂記録

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