左隻には異国の風俗を、右隻には日本に到着した南蛮船と上陸する南蛮人一行を描いており、伝狩野山楽筆「南蛮屏風」(重要文化財、サントリー美術館蔵)の図様を継承した作例とわかります。とりわけ注目すべきは左隻の描写で、中国風の異国の楼閣では、2階の窓に女性と子供の姿が見えます。1階には着飾った女性たちや、孔雀と戯れる子供も描かれています。塀と欄干に挟まれた細長い道には、南蛮人男性が椅子に腰掛けていますが、天蓋のある椅子に座る男性がカピタン・モールと考えられます。彼の元には右方からアラビア馬に乗る2名の南蛮人が駆けてきます。欄干で区切られた細長い道を馬で駆けていくさまは、京都・上賀茂神社の神事を描いた「賀茂競馬図屏風」を想起させるものです。南蛮人たちに神事の図様を用いることで、宗教性を加味した可能性があります。松樹や桐樹などの装飾的な枝振りからは、長谷川派系の画家の作と考えられます。
【南蛮美術】