遠山川の埋没林と埋没樹
とおやまがわのまいぼつりんとまいぼつじゅ
天然記念物 地質鉱物
- 飯田市南部を東西に流れる遠山川及びその支流の河床には,1980年代後半から複数の埋没木が発見されるようになった.特に木沢から大島地域では,少なくとも4地域(図2,小道木・畑上・西島・大島)にわたって数本ずつの埋没木が近接して発見されている.それらの多くは現河床に存在し,約半数は樹木上部が見られる.遠山川は河床低下や流路の変更が著しく,数年の間に新たな埋没木が発見される一方,埋没木の消失が起こっている.これまでに少なくとも60本の埋没木が確認されている.樹種はヒノキ,モミ属,ツガ属,サワラなど7種類である.2018年5月現在,数本の埋没木が近接して見られる地域のうち,小道木及び大島の2地域を本天然記念物の指定とする.詳細は後述するが,樹木の埋没過程の違いから小道木地域の樹木は林立した状態のまま埋没した埋没林,大島地域の樹木は土砂と共に運ばれ埋没した埋没樹と判断し,包蔵地の名称にそれぞれ使用した.
小道木埋没林包蔵地は現在の河川の屈曲部を含み,2018年11月21日現在,流路の内側に3本の埋没木が確認されている.樹種はヒノキであり,直立またはやや傾斜している.これまでに同範囲では6本の埋没木が確認されている.大島埋没樹包蔵地は小道木埋没林包蔵地の約700 m下流に位置する.これまでに5本の埋没木が見られ,2018年5月23日現在で3本の埋没木が確認されている.樹木が巨石に挟まれ横倒しになって角礫層中に産する.両指定範囲は,通年で埋没木が観察され,かつ埋没木の消失の可能性が低く,活用しやすい場所にある.また今後河川内の工事が行われない箇所であり,指定について河川管理者である長野県飯田建設事務所の同意を得ている.
畑上及び小道木地域から得た2本の樹木は,標本樹としてそれぞれ南信濃自治振興センターおよび梨元ていしゃ場に展示・保管されている.畑上産埋没樹は樹根が保存されたヒノキである.樹皮の残る同樹の年輪年代測定からその枯死年代は西暦714年と推定され(寺岡,2003, Goto et al., 2010),埋没年代を示す重要な標本である.また,小道木産標本樹はヒノキであり,現存長13.5 m,幹回り3.4 mと大きく,同地域一帯の埋没樹の大きさを感じさせる標本である.
- 指定
指定年月日:20191024
- 記念物