遍路道は空海(くうかい)(諡号(しごう)は弘法大師(こうぼうだいし))ゆかりの寺社を巡る全長1,400kmにも及ぶ霊場巡拝の道で,弘法大師の足跡を追体験する四国を一周する信仰の道である。指定にあたっては,阿波・土佐・伊予・讃岐の旧国名を冠し,それぞれの遍路道を呼称することとしている。伊予遍路道は延長500km以上あり,四国のなかで距離が一番長い。主要街道と重複するため,近代以降改変された箇所が多いが,今回指定を行う箇所のようになお旧状をとどめている箇所がある。仏木寺道は第41番札所龍光寺(りゅうこうじ)から第42番札所仏木寺に至る道の一部で,龍光寺から西に位置する尾根を横断し,谷部を進む部分約0.45kmに旧状をとどめる。横峰寺道は第59番札所国分寺(今治市)から第60番札所横峰寺に至る道で,二十丁の位置にある湯浪(ゆうなみ)休憩所からの山道に旧状をとどめる。指定の対象となるのは五丁石のある付近までで,妙之谷川(みょうのたにがわ)上流の谷川に沿って進み,途中谷川を交差しながら,十一丁付近からは急峻な尾根を蛇行して登る道である。延長は約 1.7kmを測り,道際に舟形や角柱形の丁石が立っている。これらの道はいずれも遺存状況が良好で,伊予における遍路道の実態を考える上で重要である。