21 福沢一郎(1898−1992) Poisson d'Avril(四月馬鹿) 1930年
群馬県富岡生まれ。朝倉文夫に彫刻を学ぶ。1924−31年渡仏、絵画に転向してシュルレアリスムの影響を受ける。30年独立美術協会の結成に参加。39年美術文化協会を結成し、前衛美術運動の指導的役割を果たす。91年文化勲章受章。
Poisson d'Avril(ポワソン・ダヴリル)は直訳すると「四月の魚」ということになるが、フランス語でいわゆる四月馬鹿のことをいう。その名の通り、画面中央には容器に入ったおもちゃの魚が描かれている。この魚や、他の奇妙な身振りをした男たちの姿は、いずれも19世紀の科学雑誌に描かれていた実験の挿絵をもとにしていることが最近明らかにされている。シュルレアリスムの画家マックス・エルンストのコラージュ(異なるイメージを同一画面に切り貼りする技法)の影響を受けた福沢は、この作品でほ科学の実験を脈絡なく組み合わせて「四月馬鹿」と名づけることで、権威的なものをユーモアをこめて批判しているように見える。