薄茶色の紙に銀の切箔をくまなく撒いた料紙に、『貫之集』の和歌3首を書写した断簡で、寂然を伝承筆者とするもの。村雲切の名称は、料紙に撒かれた銀の切箔の様子を群雲に見立てたことによる。もとは冊子本で、江戸時代初期に切断分割が始まった。村雲切の多くに、古筆了音の極札が付属しているころから、江戸時代中期までには切断分割が進んでいたことが知られる。
藤原定家の加筆があることが知られ、本品の2首目の歌頭の「拾」字がそれである。「拾」字は『拾遺和歌集』の入集歌であることを示している。また、異本との校合を加えており、本品の3首目の見せ消ちのように訂正している箇所もある。
書写年代は、定家の書き入れがあることから、定家の活躍期以前である。また、料紙の装飾技法から、12世紀半ばであると推測される。