埴輪は古墳の上や周囲にたてられた素焼きのやきものです。
丸い筒形の円筒埴輪から始まって、甲冑(かっちゅう)、盾(たて)、船、家などを表す形象埴輪、さらに人物や動物をかたどる埴輪が作られるようになりました。
埴輪はたいていの場合、古墳をめぐるように、あるいは、古墳の一角に設けられた壇のようなところにたてられていました。しかし、家形埴輪はもっとも早く出現し、多くは古墳のてっぺんから出土しています。このことから、家形埴輪には、他の埴輪とは違う特別な意味があったと考えられています。
この埴輪の作られた古墳時代中期、古墳の上では葬送の儀礼が行われました。それは、儀礼を行う者が、次にその地域を支配することを人びとに示し、地域をまとめるための儀礼でもありました。そこに置かれた家形埴輪は、リーダーの力の象徴だったのではないでしょうか。
この埴輪は、入母屋造の大きな建物の前と後ろに入母屋造の小さな建物が、左右には切妻造の小さな建物が付属する、非常に複雑な構造をもっています。もしかすると、母屋を中心に複数の建物で構成される豪族の家の景観を、ひとつの家形埴輪にした、非常に独創的な表現なのかもしれません。古墳時代の建物や集落の様子を知る重要な手がかりといえるでしょう。
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