山水図屏風 さんすいずびょうぶ

絵画 / 室町

山と水辺の風景を描いた、山水図と呼ばれる絵です。日本や中国の絵画でよく見かけるテーマですが、実はこうした山水図には8つのシーンが描かれていることが多いのをご存じでしょうか。
中国で北宋時代に始まった山水画のテーマ、瀟湘八景(しょうしょうはっけい)です。
瀟湘八景とは、中国・湖南省洞庭湖(どうていこ)で合流するふたつの川、瀟水(しょうすい)と湘水(しょうすい)のつくる8つの名勝で、平沙落雁(へいさらくがん)・遠浦帰帆(えんぽきはん)・山市晴嵐(さんしせいらん)・江天暮雪(こうてんぼせつ)・洞庭秋月(どうていしゅうげつ)・瀟湘夜雨(しょうしょうやう)・煙寺晩鐘(えんじばんしょう)・漁村夕照(ぎょそんせきしょう)と、それぞれ漢字4文字で表されます。いずれも、霧がたちこめるような詩情あふれる景色で、描かれた風景に詩を添えることも多く行なわれました。
中国から日本に入ってきて、風景画のお手本として親しまれ、やがて瀟湘八景から離れて、他の風景を描く場合にも、それぞれのテーマが絵になるシーンとして取り込まれるようになりました。さらに、「金沢八景」、「近江八景」など、日本国内の景色を瀟湘八景になぞらえて描くようになりました。
さて、それではこの絵の中に瀟湘八景のテーマを探してみましょう。八景のうち7つを確認することができます。
向かって右の屏風の画面右端から見ていきましょう。
右下に建物が何軒も集まっています。軒に飲食店の印、酒旗(しゅき)を掲げる家も見えますね。これは、市の賑わいを描く「山市晴嵐」でしょう。
5枚目から6枚目にかけて、漁船が漁をしているシーンはのどかな漁村の様子、「漁村夕照」。
その上方に目をやると、遠くに帆掛け舟がうっすらと見えるので、「遠浦帰帆」。
さらに画面左端では、雨が降っている様子です。これは、しとしとと降る夜の雨「瀟湘夜雨」でしょう。
向かって左の屏風には、砂浜に雁が降りる「平沙落雁」、山あいの寺で鐘が鳴る「煙寺晩鐘」、山に雪が降り積もる「江天暮雪」の3つのシーンが描かれています。是非、探してみてください。

山水図屏風

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