久留米絣の代表的作家の松枝哲哉(1955-2020)による作品。松枝は 重要無形文化財工芸技術保持団体の久留米絣技術保持者会長を務め、藍染、手織、絣手括の技術保持者認定を受けた。本作は平成13年(2001)に日本伝統工芸展に出品し、入選を果たした原作品である。本作のような幾何学文以外を織り表した絵絣は、久留米絣の特徴のひとつである。ここに用いられた交錯する曲線の表現や、ごく小さな丸い点は、絣の表現の中でもとりわけ難しい文様である。また、色の掛け合わせによる表現の他に、糸を複雑に染め分けることで細かな縞や格子を作り上げ、更に文様に奥行きを出す工夫を施している。本作は光の表現を追求した哲哉の代表作のひとつと言える。