風返稲荷山古墳は、霞ヶ浦沿岸に位置する墳丘長約78mの前方後円墳で、古墳時代後期末頃(6世紀末頃)の築造と推定されている。本一括はその副葬品、全53点。
銅鋺は、蓋・鋺身・承台の3点で構成され、遺存状態がきわめて良く、小型で姿形も整う。様式的・技術的に朝鮮半島、百済からの搬入品かその系譜をひくとみられる。馬具類は2組あり、鏡板付轡、鞍金具、尻繋装飾(雲珠・辻金具・杏葉)が遺存する。石室出土の金銅装馬具は大型で、特に鍍金層が良く残り当時の馬具が放つ光彩の実相をよく伝える。金銅装の円頭大刀、金銅・銀装の頭椎大刀は、拵えが良好に遺存しその構造がよく理解できる。
西日本で築造が終了した後も東日本で継続して造られた最末期の前方後円墳における、副葬品組成をよく示す遺存状態の良好な一括である。また、当時の金工品の形状や製作技術についての変遷を知るうえでも重要であり、高い学術的価値を有している。