旧日向家熱海別邸は,熱海駅の東方約300mの斜面に位置する。
実業家日向利兵衛の別邸で,地下室は上屋の竣工後,地下構造体を利用して造られた。設計はブルーノ・タウトで,昭和11年に竣工した。
平面は,社交室,洋風客間,日本間などを東西に並べ,洋風客間と日本間の背後に床高を利用して上段を設けている。社交室の照明は,天井から竹を二列に吊り,そこから多数の電球を下げて波形をつくる特異なものである。
旧日向家熱海別邸地下室は,伝統素材を多用した社交室,色彩豊かな洋風客間,材料や寸法の整った日本間等,各室の内装がよく吟味され,意匠的に優秀である。
ドイツの表現主義建築を主導し,日本美の再発見に努めた著名なドイツ人建築家のブルーノ・タウトが,日本に唯一残した建築として,重要である。