綿業会館は,大阪の中心的な商業地区である船場のほぼ中央にある。紡績繊維関係者の倶楽部建築として,昭和5年3月着工,昭和6年12月に竣工した。設計は渡辺建築事務所の渡辺節で,村野藤吾も参画したとされる。
鉄骨鉄筋コンクリート造,地上6階建,地下1階建で,塔屋を設ける。1階の会員食堂,2階の談話室,貴賓室,会議室,6階の大会場などが,倶楽部建築としての主要室である。
ルネッサンス風の簡明な外観を基調としながら,内部の各室は様々に異なったスタイルを取り入れる等,我が国の折衷様式建築を代表する建築の一つであり,各部の意匠も秀逸で,様式建築の習熟を示す建築として,高い価値がある。
設備に最新の技術を導入し,合理的な平面計画をもつ等,建築家渡辺節の代表作の一つとしても重要である。