三宝院唐門 一棟
唐門は表書院の南方西寄りに、庭をへだてて建っている。慶長四年(一五九九)に屛中門として現在地よりやや北寄りに建設されたもので、その後慶長二十年(一六一五)、安永年間(一七七二~八一)頃の二度の移築を経て現在地に落ち着いた。平成二十二年の半解体修理により、漆塗と金箔押が復されたが、あわせて建築にあたって他所にあった門の部材を転用して建てられたことが確認された。
三間一戸の平唐門で、面取方柱の主柱上に冠木をのせ、男梁をかけて軒桁を支え、中央はさらに蟇股または束をもって棟木を受ける。軒桁下には前後とも細い控柱を立てている。軒は疎茨垂木で小舞打とし、屋根は唐破風造、檜皮葺である。このように構造、手法は簡素であるが、扉には表裏とも大きな五七桐を浮彫とし、左右の脇間にも同じ大きさの菊花を入れる。このような大まかな意匠は桃山時代の気風をよく表現したものというべきで、現存平唐門の傑作のひとつとするに足りる。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)