コンポジション
Composition
1933年頃
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-57]
1932(昭和7)年秋の札幌での個展目録に三岸好太郎は硬い調子の画論を発表している。その骨子は、鋭角的要素(造型的構成心理)と鈍角的要素(造型的感情心理)という対比的な二つの要素を融合させて、そこから生まれるムーヴマンを追求したいというものであった。それは一連の道化像が抒情的、ロマン的傾向に偏していたことに対する軌道修正であったと思われ、味感(抒情性)とともに、形象や色彩といった絵画的要素も生かそうとした初期の姿勢を再確認するものであった。
そしてこの年の暮れから翌年にかけて三岸の制作は大きく変化を見せ、さまざまな造形的な実験も試みられる。そうした作風転換のなかで、画論に示したような造形への意図の実践例を、たとえばこの作品に見ることができる。厚く盛り上げたマティエールや微妙な色彩表現に感情的な要素を込めながら、楽器の形態を抽象化した理知的な画面構成を目指しているのである。