のんびり貝
Carefree Shellfish
1934年
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-62]
横長の画面の中央に描かれた大きなシャコ貝。「のんびり貝」という命名そのままにユーモラスな雰囲気が漂うが、長く伸びた黒い影やぽっかり口を開けた貝殻の表現にはどこか虚無的な不安も感じられる。1934(昭和9)年春、旅先から帰った三岸好太郎は蝶と貝殻をモチーフとした一連の作品をわずか10日間ほどで描きあげて3月の第4回独立展に出品した。前年の作品とは一変した幻想的な表現は賛否両論を引き起こしている。その後、この作品が売れ、三岸は節子夫人とともに「貝殻旅行」と称して関西旅行に出かけるが、その帰途、一人とどまった名古屋の旅館で持病の胃潰瘍に倒れ、31歳の短い生涯を閉じることになる。