少女の首
Portrait of a girl
1932年頃
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-79]
三岸好太郎の描く女性像は、実に不思議な魅力をたたえている。それらの中には必ずしもモデルを前にしての制作ではないものもあり、またモデルがあった場合でも、似ていると評されることをむしろ三岸は好まなかったともいう。三岸が描きたかったのは、外見の容貌を第一とするのではなく、女性から彼が感じ取った一種の情動のようなものであったかもしれない。「好太郎は女の顔にホトホト惑溺する。尋常の愛情ではこんな美しい顔は描けるものではない。女の魅惑への陶酔あって、はじめてこの繊細な美は生命を与えられるのだ。」と節子夫人が記しているように、陶酔するほどの情熱がこめられた三岸の絵筆によって、女性像は美や醜を超えて魅力ある絵画へと昇華していく。この《少女の首》もまさしくそうした三岸独特の女性像である。暗褐色に塗り込められた背景から、大きな目をした少女の横画を画浮き立ってくる。どこか異様さをも感じさせるほどだが、看過できない強い印象を与える。