20
浜口陽三(1909−)
HAMAGUCHI,Yozo
アスパラガス
Asparagus
昭和33(1958)年
21
浜口陽三(1909−)
HAMAGUCHI,Yozo
西瓜
A Watermelon
昭和56(1981)年
1930−39年にフランスに滞在してドライポイントやメゾチントの銅版画を学んだ浜口陽三は,多色刷りのカラー・メゾチントの技法で独自の造形美の世界を開き,世界各地の国際展で受賞を重ねた。浜口の版画は,野菜や果物などの日常の見慣れた事物を題材にしながら,ビロードのような静寂な闇ともいうべき黒い画面に内的な光を帯びた静物が浮かび上がる画面世界で知られている。また戦時中には日本に戻り,日本画を研究してその独特の空間構成と墨の表現を学び,戦後に再びフランスに渡り,現在はサンフランシスコに在住している。≪アスパラガス≫は色彩のない卓上静物であるが,闇に浮かぶ地上と天体といった,無限の空間と時間をたたえた宇宙像にも見えてくる。≪西瓜≫は大きな横長の変形画面いっぱいに伸びた赤い西瓜が,山並みの地平のごとく横たわり,鮮やかでダイナミックな世界の広がりに変身している。(K.T.)