宇太水分神社本殿 三棟
社伝では崇神天皇代の創立と伝わる式内社だが、歴史はあまり明瞭でない。本殿は向かって右より第一殿、第二殿、第三殿の三殿からなる。第一殿は棟木に「元応弐季(一三二〇)申庚弐月弐参日上棟」とあって、年代がはっきりしている。第三殿もこれと同時とみてよかろう。ただし、第二殿は室町時代の手法になる部分が認められる。三殿とも同じ大きさの一間社隅木入春日造であって、組物は出組、軒支輪つきで、中備としては各面とも彫刻を入れた本蟇股を飾る。頭貫鼻には木鼻を刻んでいる。向拝は組物が三斗組で、蟇股、頭貫鼻などは身舎と同様である。このように小規模な建築にかかわらず、かなり装飾的細部に富んでいることに、この本殿の特徴がみられる。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)