苗村神社西本殿 一棟
苗村神社は式内社であり、現在社域は東西に分れ、おのおのに本殿があり、東西本殿のほか境内社八幡社本殿、楼門も重要文化財であって、中世の遺構がそろっている。西本殿の建立年代については、社蔵の棟札に、建保五年(一二一七)に建立されたこと、徳治三年(一三〇八)二月四日造立始、三月十九日棟上の記があるものがあり、本殿の様式手法も鎌倉時代後期を示しているから、この時再建されたものと考えられる。建立後、文明八年(一四七六)そのほかにかなりの修理が加えられたが、昭和三十二年~三十三年度の解体修理により、大部分が旧態に復された。
三間社流造の前面向拝部に一段低い床を張り、柱間に菱格子を入れて前室とし、その前面にさらに一間の向拝を付けた形式である。この形式は滋賀県下には類例がみられる。身舎は円柱状に舟肘木をのせ、妻飾は扠首組とする。扉構は正面中央間のほか、右側面にも片開き板扉を設けている。前室及び向拝は角柱、三斗組で、各部材とも面取とし、中央に蟇股を飾る。総体に様式手法は鎌倉時代後期の特質を表しており、ことに蟇股は美しい。なお殿内の厨子は、切妻造、板葺で、舟肘木を桁から作り出した小規模、簡素なものであるが、手法は優秀である。本殿と同時代に制作されたものであろう。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)