『周防内侍集』は、平安時代後期の女流歌人周防内侍の家集である。本帖は藤原俊成(一一一四-一二〇四)の書写にかかり、『周防内侍集』の現存最古本である。
体裁は綴葉装冊子本で、料紙には漉目のある薄墨紙が用いられ、料紙と共紙の原表紙には俊成筆で外題が記されている。本文は半葉十一行、和歌は一首二行書き、詞書は二字下げに書かれ、九十六首を収め、文中数ヶ所俊成自身の手による訂正等がある。その書風は俊成独特の屈曲著しい筆法を示し、書写奥書はないが、その筆致よりみて俊成七十歳頃の書写になるものと認められる。
現在知られる『周防内侍集』はいずれも、この俊成筆本からの書写本であり、本帖はその原本として国文学史研究上に価値が高く、また歌人として名高い俊成の筆跡を伝えている点でも貴重である。