書画の表具を修理する工程のなかで、打刷毛によって裏打紙【うらうちがみ】を打つ行為は、本紙と裏打紙を密着させ、さらに裏打紙の強度を増すために不可欠な作業であり、打刷毛の毛は、柔軟性を保持しつつも堅さと耐久性のあるものでなければならない。この打刷毛製作の技術を習得するには厳しい修行と豊富な経験を要するため、現在、国宝・重要文化財の書画を修理するために用いられる打刷毛を製作しているのはごく少数のみとなっている。こうしたことから、早急に保護を図る必要のある表具用打刷毛製作の技術を選定保存技術に選定するものである。