装〓技術における刷毛は、紙・絹を材料とする文化財の修理において、料紙や料絹を整形したり、裏打ちする作業の際に水あるいは糊を塗布するために用いられるものである。刷毛の種類はその用途によって、水刷毛、糊刷毛、付け廻し刷毛、撫刷毛、打刷毛に大きく分類される。そのため、各々の用途に適した、異なる種類の獣毛(山羊、馬、鹿等)が刷毛を仕立てる際に用いられる。打刷毛を除いたこれらの刷毛には、糊の濃度の違いや紙の厚薄・強度等に応じて、むら、たまり、すじ等を生じず、手早く均一に塗布できることが要求される。そのため、刷毛の製作には入念かつ繊細な手作業と熟練の技が求められる。
表具用刷毛製作の技術を習得するには、長い修行と厳しい経験とを要するため後継者は少なく、全国でもわずかな技術者が存在するのみであり、保存の措置を講ずる必要がある。