石山寺多宝塔 一基
この多宝塔は墨書から建久五年(一一九四年)に造営されたものと推定される。建立後は数回の修理を経て、昭和七、八年に解体修理、平成二十三~二十四年には屋根の葺替えが行われた。塔は下階大面取の柱に出組の組物をのせ、面取垂木二軒の軒をうける。上階の円柱は四手先の組物をもって二軒の深い軒をうけている。上階がしまって、上下の釣合がよく、また比較的緩い勾配の檜皮葺の屋根に青銅製の相輪を置いた形態はみごとな調和を示している。内部には高欄付きの仏壇を設け、内陣、外陣とも折上小組格天井とし、柱そのほか全面に彩色を施す。現存の多宝塔の中で最も古くまた美しいものである。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)