前掲の南瞻部洲大日本国正統図と同じく、いわゆる行基式日本図の一つである。
体裁は、台紙貼り様に裏打ちされ、料紙には楮紙を用い、天地には二七・七センチ幅に淡墨罫を施して、龍で囲まれた部分に日本図を描いている。九州、四国を右に描くが、左方は本州中部の遠江、越後国以東を欠している。本州は三河国(一部)、尾張国(半分)、信濃、飛騨国(領域の一部、国名等の記載はなし)、越中、能登国(国名のみ記載)以西より長門、石見国までの各国を存し、志摩国は陸続きに描かれ、四国には伊予、土佐、阿波、讃岐の四か国がみえている。九州は大隅など九か国を存し、筑前国下方には「竹嶋」「シカノ嶋」があり、龍の外側には対馬、隠岐の二島がみえ、隠岐には「海嶋国付」と注して別島を描いている。また、龍及国(琉球国)のほか唐土、高麗(左隣りには無注記の陸地)、羅刹国、新羅国があって各注記を施している。日本の各国下に注された等級は、いずれも『延喜式』の記載と合致し、田数注記は『倭名類聚抄【わみようるいじゆうしよう】』『拾芥抄【しゆうがいしよう】』とほぼ同じで、山城国から諸国に至る街道線、及び郡数の記載はない。
本図は行基式日本図の第Ⅱ型(志摩国が本州と陸続きであり、羅刹国及び雁道が描かれている)に属し、田数注記は南瞻部洲大日本国正統図が「丁」までの単位を記しているのに比べ、「段」「歩」までの単位を記すなど詳細である。年紀等はないが、筆跡及び内容等よりみて鎌倉時代後期の作成と考えられ、仁和寺図(嘉元三年書写)にはみえない島名、注記等を存し、わが国の近接諸国までを描き注目される。