民経記〈自筆本/〉 みんけいき

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 鎌倉

  • 千葉県
  • 鎌倉
  • 48巻
  • 国立歴史民俗博物館 千葉県佐倉市城内町117
  • 重文指定年月日:19890612
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 大学共同利用機関法人人間文化研究機構
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『民経記』は、鎌倉時代の公卿であった民部卿藤原経光(一二一二-七四)の日記で、『経光卿記』とも呼ばれている。記主の経光は、治部権少輔、左右大弁、蔵人頭を経て、仁治二年(一二四一)に従三位に昇り、以後権中納言、民部卿等を歴任した。この経光の家は、父頼資の時に勘解由小路と号し、後には広橋と称している。
 本巻はもとは広橋家に伝来したもので、経光自筆本四十八巻の他に、その子孫である兼仲、光業等の写本六巻、一帖、三冊(鎌倉後期~江戸前期)を含んでいる。所収記事は、経光が叙爵された直後の嘉禄二年(一二二六)四月一日より、断続して経光が五六歳、正二位民部卿であった文永五年(一二六八)十一月十六日までである。自筆原本のうち本記は四十二巻で、これは暦記七巻と、文書を飜した料紙に書かれたもの三十五巻の二種に分けられ、別記は寛元三年(一二四五)十一月・十二月の大仁王法参仕記等六巻を存している。
 体裁は各巻ともほぼ同一の巻子装になり、暦記を除く各巻の料紙は、いずれも文書を飜して用いたもので、大部分が天地に横墨界を施しているが、暦記では間明きの行数の異なる各種の具注暦を用いている。本文には首付、頭注、墨訂正や傍注のほか裏書などもみえ、各巻の末に経光をはじめ光業等の奥書を記すものも多い。
 各巻の内容は、経光の経歴を反映して当時の朝儀や関白の動静等を明らかにし、特に経光の蔵人時代の記事を収めた巻が数多く現存している。たとえば伊勢公卿勅使発遣や、近衛家実の女長子(鷹司院)の入内に関する記事は詳細で、時に社会情勢にかかわる記述もみられる。
 また、これらのなかには、本記に同時期の暦記と、文書を飜した料紙に書かれた日次記が併存するものが四例あり、日記の作成のあり方を考える上に注目される。さらに、各巻の紙背【しはい】にはほとんど文書が存し、父頼資宛ての書状をはじめ申状、院庁下文、補任状等、多岐にわたっている。
 このように本巻は、記主経光の自筆本を多数存し、鎌倉中期の朝儀や貴族社会の様相等を明らかにして貴重である。

民経記〈自筆本/〉

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