九条道家が建長二年(一二五〇)十一月に定めた家領初度処分状の案文で、弘安三年(一二八〇)五月六日、東福寺開山の円爾弁円(聖一国師)が同寺の根本文書として書写せしめたものである。筆者は大別して四筆に分かれるが、本文の抹消書入【かきいれ】と、巻末の道家置文のうち自署の最末一行と、円爾奥書の四行は同筆であって、これは円爾の自筆と認められる。本文の体裁は道家の原本(宮内庁書陵部所蔵)に比べ、行数、字詰めこそ異なるが、原本にある加筆訂正から句点、訂正墨線に至るまで、その趣きを如実に伝えている。
東福寺草創の規模と開基道家の遺命を伝え、後の違乱に備えんとした円爾の周到な用意を示している。