濃茶麻地菊棕櫚文様帷子 こいちゃあさじきくしゅろもんようかたびら

工芸品 / 江戸

  • 京都府
  • 江戸時代
  • 濃茶麻地の単の帷子である。文様は染めおよび刺繍の技法を用い、菊花と棕櫚の葉を表す。菊は、花弁を型鹿子で赤く染め、萼の部分を撚金糸で駒詰繍する。金糸の周囲には、萌葱色の撚糸を駒繍し、萼の輪郭を表す。背面枯死した部分のみに、菊花の萼部分を駒詰繍で表す。菊の葉は白抜きによるものと、黄と藍をかけた濃緑色で染め表した二種類ある。白抜きによる葉は、撚金糸を駒繍して輪郭を表し、紫の色糸で纏繍して葉脈を表す。濃緑色の葉は、撚金糸を駒繍して輪郭と葉脈を表す。茎を鹿子絞りで表す。菊花の外側に鹿子絞りで棕櫚の葉を放射状に表す。菊花や葉の周囲が滲んでおり、輪郭部分に地色に近い濃茶色を挿している。文様のところどころに墨による下描線が見られる。
     文様の構成は、前身頃は、左胸辺りから左袖に向かって広がる一群と衿先辺りから裾に向かって広がる一群とに分かれて表される。後身頃は、右袖から枝を伸ばして背中心に向かって広がる一群と、右腰から裾に向かって広がる一群との二方向に表され、左腰部分に余白を設ける。左右両袖の丸み部分に二回仕立て直しの跡が見られる。裾に裾上げの跡が見られる。
  • 身丈155.1 裄62.7 前幅31.2 後幅32.0 袖幅31.0 袖丈44.4
    衽幅16.2 衽下り13.0 襟幅12.0 襟下56.7 (㎝)
  • 1領
  • 京都国立博物館 京都府京都市東山区茶屋町527
  • 重文指定年月日:20090710
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 独立行政法人国立文化財機構
  • 国宝・重要文化財(美術品)

表は濃茶麻地の単仕立ての帷子である。文様は背面を中心に、側面から見た菊花の背後に、棕櫚の葉が放射状に広がる様を表す。寛文小袖に多く用いられる菊文様に、棕櫚を組み合わせた文様を染めと刺繍を併用して伸びやかに表現し、華やかな雰囲気である。寛文七年(1667)刊『御ひいなかた』に掲載の「ぢうこん/きくにしゅろ」と記載される雛形図と近似することから製作年代を推測することができる。

濃茶麻地菊棕櫚文様帷子

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