染分縮緬地襷菊青海波文様友禅染振袖 そめわけちりめんじたすききくせいがいはもようゆうぜんぞめふりそで

工芸品 染織 / 江戸

  • 江戸 / 18世紀
  • 表は上下を染め分けた縮緬地、裏は紅平絹(後補)を用い、現状は裾ふき部分のみに薄綿を入れた袷仕立ての振袖である。上半身は、浅葱地に白上げで太細の線を表して三重襷とし、太線の片側には紺、もう片側には薄い赤色の細線を入れる。下半身は、側面から見た菊花を青海波風に友禅染で表す。菊花の花弁は、紺、紫、黄、極薄い茶などで色挿しを行い、同系色で片暈しとする。顎は灰色味がかった青緑色に、黄色や紺、紫などの色を暈すが、灰色の菊花の顎のみ暈さずに塗りきる。間の白場は浅葱と紫のつかみ染とし、その上に紅白の梅枝を刺繍で表す。刺繍は、紅、白、濃萌黄の平糸を用い、平繍、纏繍をするほか、梅花の一部に撚金糸を駒繍する。両袖の振り部分にも類似した刺繍がみられる。この刺繍は、刺繍糸の色味や金糸の駒繍の糸が微妙に異なる。前身頃の左右胸部分、背中心、両外袖上部分に桜の折枝を刺繍で表す。この刺繍は、紅、薄黄、濃萌黄の平糸を用い、平繍、纏繍、割繍をするほか、桜花の一部に撚金糸を駒繍する。身頃の肩山は縫い合わせてあるほか、左右両袖の身頃側に仕立て直しの跡が見られる。右身頃背裏の腰部分に左記墨書がある旧裏地を縫い付ける。
  • 身丈151.0 裄61.6 (㎝)
  • 一領
  • 重文指定年月日:20200930
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 国宝・重要文化財(美術品)

表地を染め分けて、腰を境に上下で文様を変えた腰替わりの意匠で、江戸時代中期に流行した意匠構成である。腰から上は浅葱地に白抜きとした一見簡素な三重襷であるが、片側に紺色、反対側には薄い赤色の細線を入れることで、画然とした線表現とする。一方、腰から下は側面から見た菊花を青海波風に友禅染で表し、花弁の片側に暈しを入れる。菊花の配色に規則性はないが、明暗の連続に創意工夫がみられる。菊花の間には、紫と浅葱色の染の上に平糸を太く用いた平繍を主として、ふっくらと厚みのある刺繍で紅白の梅枝を表し、華やかさを加える。両胸、背中心、両袖の桜の折枝は刺繍による伊達紋である。
裏地に縫い付けられた墨書裂によって、浅草見附脇の名主小西喜左衛門の娘の菩提を弔うために享保十五年(1730)に奉納した振袖であることが分かる。全体に、江戸時代中期の特徴をよく示し、裏地墨書による資料的価値も高い遺例として重要である。

染分縮緬地襷菊青海波文様友禅染振袖

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