この芸能は、奈良県吉野郡大塔村篠原の天神社の祭のおり(一月二十五日)にその社前および万福寺で踊られるもので、小歌踊の一種である。
曲目は三十七曲が伝承されているが、まず天神社の神前に「梅の古木」「世の中踊」「宝踊」の三曲を奉納し、そのあと万福寺の本尊の前で、「入羽」から「御舟踊」「近江踊」「十七八踊」「大原木踊」などの曲が演じられる。
その芸態は、紋付・袴の男数人の小太鼓にあわせて、盛装の少女たち(いまは中老年の女性)が小歌を地にして、扇をとって踊るもので、その踊振りには初期歌舞伎踊を思わせるものがあり、小歌踊の代表的なものとして芸能史的にも価値の高いものである。
もと、踊のほかに狂言や地芝居もあったというが、いまはその面影もなく、古風な踊だけが伝えられている。