紙本著色四季花木図〈/六曲屏風〉

絵画 / 室町

  • 東京都
  • 室町
  • 一双
  • 東京都千代田区丸の内3-1-1
  • 重文指定年月日:19910621
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 公益財団法人出光美術館
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 画面全体にわたって雲母【きら】を刷き、細かな金銀箔を濃く薄く散らして表された霞がたなびくなかに、花木が描かれている。向かって右隻には右から紅梅、熊笹、松、小姫百合、紫陽花などが、左隻には、竹、りんどう、女郎花【おみなえし】、萩、すすき、紅葉などが配される。左隻の左上方の遠山には、雪をかぶった松が描かれており、両隻で四季の移りかわりを表している。
 主だった花木が、ほぼ同じ大きさで並置されているのは、いかにもやまと絵らしい構図である。このように大きく花木を扱う意匠による障屏画は、絵巻物のなかに画中画として描かれている例があり、遅くとも南北朝時代には制作されていたものと考えられるが、現存するその種の障屏画は室町時代以降のもので、しかも遺品の数自体が少ない。
 本図はそうした数少ない室町期のやまと絵系屏風絵の貴重な一例である。また、細かな金銀箔からなる柔らかな雲霞の手法から、本図が近世的要素が入りこむ前の作品であると考えられる点でも貴重である。紫陽花という題材は珍しいものであるが、これも南北朝時代の後円融天皇(一三五八-九三)宸翰と伝えられる「新撰朗詠集抄」(徳川美術館蔵)の料紙装飾のなかに見出されるものである。
 やまと絵系の障屏画は、現存する作例に乏しいため、制作年代を判定するにはなお不確定な要素が多いが、本図については室町時代中頃を想定しておきたい。
 なお、両隻に「土佐光信筆 探幽斎」の墨書と「守信」朱文瓢型印があるが、この紙中極【しちゆうきわ】め(作品に直接書きこまれた一種の鑑定書)をどのように考えるかは現在の段階では確定しがたい。

紙本著色四季花木図〈/六曲屏風〉

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