錺金具製作 かざりかなぐせいさく

文化財保存技術 建造物

  • 選定年月日:19980608
  • 選定保存技術

 建造物を錺金具で飾ることは、わが国では現存する最古の建築である国宝「法隆寺金堂」以来、伝統的に行われている。しかし、時代的にみると平安時代までの古代建築と桃山時代以降の近世建築において盛んである。とくに桃山時代から江戸時代初期にかけて、錺金具の使用は最盛期を迎え、装飾性の高い手の込んたものが使われた。それらは、社寺建築だけでなく、将軍や大名の居館となるような豪壮な書院造をはじめ、住宅建築にも多用されるようになった。文様の題材も、それまで用いられていた唐草や宝相華【ほうそうげ】に加えて、草花、魚、虫、動物、雲、波、日月【じつげつ】、扇子、壷、紐などの日常品を意匠化したものなど、多様化していった。
 錺金具技法は、一般に最も多く用いられている銅板の場合を例にとると、鏨【たがね】を使って形を切り抜き、文様を彫る。彫りには、透彫【すかしぼり】、毛彫【けぼり】、蹴彫【けりぼり】、肉彫【ししぼり】、魚子【ななこ】等の技法がある。彫りの終わった錺金物は必ず表面に仕上げを施す。仕上げには、水銀焼付による金鍍金【めつき】のほか、漆箔押し、金銷【きんけし】、漆焼付、七宝等の技法がある。これらの一つひとつの工程は、その習得に長い経験と熟練を要する技術であり、これを受け継ぐ人材は希少で、伝統的な技術が失われつつあり、早急に保護を図る必要がある。

錺金具製作

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