美術工芸品錺金具製作 びじゅつこうげいひんかざりかなぐせいさく

文化財保存技術 美術工芸品

  • 選定年月日:20191025
  • 選定保存技術

 錺金具は、古代より荘厳や装飾などを目的として多くの文化財に用いられてきたもので、銅を中心とする金属板を成形し、文様を彫り、表面仕上げを行った金工品である。美術工芸品における用途は多様であるが、とくに掛幅装や巻子装などに表装された仏教絵画や経典などの軸首や八双金具、屏風装における屏風金具、襖における引手金具など書画の表装や、厨子、神輿などの工芸品に遺品が多い。これらは用途に応じ意匠を凝らし、高い装飾性を有することが特徴で、構造の補強や材質の保護などの役割を担う。
 一般的に伝統的な錺金具製作は、主として以下の工程をたどる。はじめに鏨【たがね】を用いて形を切り抜く。やきなまし、蠟付【ろうづけ】などにより成形を行うとともに、透彫【すかしぼり】、毛彫【けぼり】、蹴彫【けりぼり】、肉彫【ししぼり】、魚子【ななこ】などの種々の技法を用い、文様を彫出【ちょうしゅつ】する。最後に鍍金【ときん】、漆塗、煮色【にいろ】、燻【ふす】べなどの技法により表面仕上げを行う。
 美術工芸品錺金具製作は、文化財に関する広い知識のうえに、多様な技法、極めて精緻、微細な加工技術の習得を必要とする。文化財(美術工芸品)修理において、伝統的な工法をもって高度な技術で製作された錺金具を欠かすことはできず、同製作技術に対し保存の措置を講ずる必要がある。

美術工芸品錺金具製作

ページトップへ