木造不動明王立像 もくぞうふどうみょうおうりゅうぞう

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 1躯
  • 重文指定年月日:19960627
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 福満寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 等身の不動明王・毘沙門天の立像で、不動は巻髪で天地眼、牙上下出のいわゆる十九観様の形相で、毘沙門天は左手に宝塔を捧げ持ち、右手で宝棒を持つ姿である。ともにカツラの縦一材より頭体幹部を彫出し、前後に割って内刳(裳底部に抜ける)を施した上で割首を行う。体部背面には上下二材を矧ぐ。こうした構造技法に加え、両像は眼や頬を突起させる癖のある顔立ちが共通し、一具の像として作られたことが明らかである。小振りの頭部で腰高の長身の姿や、穏やかな怒りの表現、浅い彫り口などには平安時代後期の特色が顕著である。その作風には多少洗練を欠くところがあり、在地の仏師の手になることも考えられよう。
 本寺にはやはり平安後期の作になる半丈六の薬師如来坐像(重要文化財)が伝わるが、用材が同じカツラであることから、本一具がその脇侍像として造られた可能性も考慮すべきであろう。製作の時期は十二世紀前半と推定されるが、一説に天永三年(一一一二)と伝えられる本寺の創建期の作とみて矛盾がない。
 現在、表面が近世に施された粗悪な彩色に覆われているため、像容が著しく損なわれているが、本体の木部は健全で、不動像の岩座の大半や、毘沙門天像の光背や邪鬼なども当初のものを残しており、保存状態は良好である。不動・毘沙門一対の信仰造像は天台に始まり、平安末以降に盛んになったことはよく知られているが、平安時代にさかのぼる例は意外に少なく、本一具はこの種の大型の遺品として貴重である。

木造不動明王立像

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