キトラ古墳 きとらこふん

史跡 古墳

  • 奈良県
  • 高市郡明日香村
  • 指定年月日:20000731
    管理団体名:明日香村(平13・11・29)
  • 史跡名勝天然記念物

 キトラ古墳は,奈良県明日香村の西南部,檜前の地に築造された,7世紀末頃の終末期古墳である。周辺には天武・持統合葬陵や特別史跡高松塚古墳を初めとする終末期古墳が集中し,天武・持統朝の皇族の墓域とする説もある。昭和58年にNHKにより,墳丘の電磁波探査とファイバースコープを用いた石槨の調査が実施され,壁画古墳であることが判明した。以上の調査は,古墳内部の調査に,自然科学的手法を初めて本格的に用いたものである。明日香村では,平成9年に填丘の調査を行い規模等を確認し,平成10年には超小型カメラにより再度石槨内部調査を実施し,石槨・壁画の概要を明らかにした。これらの成果を受け,平成12年7月に史跡に指定された。

 キトラ古墳は,低丘陵の南斜面に立地する,径約14m,高さ約3mの二段築成の円墳で凝灰岩切石組の横口式石槨を主体部とする。石槨の奥壁・側壁・天井の全面に漆喰が塗られ,そこに四神図と天文図が極めて具象的に描かれる。四神図・天文図いずれも唐墓や高句麗墓に見られ,大陸の影響を直接受けたものである。全容がほぼ明らかになった玄武・白虎図には,高松塚古墳壁画とほぼ同じ表現が見られ,両者が同じ原図に基づいて描かれたことがわかる。天文図は,内規・赤道・外規・黄道が描かれ,二十八宿以外の星座や星が配されるなど,高松塚古墳の星宿図より本格的なものである。当時の中国や朝鮮半島で用いられた原図を忠実に写したものと考えられ,東アジア全体でも現存する最古の精密な星図である。これらの壁画の内容は,当時の東アジアとの交流を考える上で重要であり,美術史・天文学的にも貴重である。
 キトラ古墳は,古墳の位置や石室の構造などから見て,天武・持統朝の皇族の墓であると推定され,その歴史的価値はきわめて高い。また,飛鳥地域の同時期の古墳の中でも,壁画が描かれたのは同古墳と高松塚古墳に限られている。そして,天井の天文図には高松塚古墳にも見られない特色が有り,その学術的価値は高松塚古墳壁画と遜色ない。よって,特別史跡に指定しようとするものである。

キトラ古墳

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